雨ばかりな印象の3月ですが暖かい日が多く、もうすっかり春といった感じ。そのせいかアイスコーヒーをご注文いただくことも増えてきました。
でも店頭でお客さんと話していると真夏でもホットしか飲まない!という方も割といて、その理由を聞いてみると単純にホットコーヒーが好きという方や冷たいものはなるべく避けたいという方も多いんですが、結構な割合で耳にするのがアイスコーヒーが苦手という方がいます。
セミナーなんかでも必ず何人かいらして、聞いてみると
- 苦い
- 味がない
- 香りがない
- 雑味を感じる
大体こんな感じの理由に集約されます。
アイスコーヒーを飲むという方でもなんとなくこんなイメージを持ちつつ飲んでいる場合も多いんじゃないでしょうか。確かに自分の経験を振り返ってみてもそういうアイスコーヒーが多いのは事実で、そんなんだったら飲みたくない・苦手となるのは当然のことだよな、と思います。
でもこれにはちゃんと(と言うのも変ですが…)した理由があるんです。
目次
美味しいアイスコーヒーの条件
コーヒー豆の品質
皆さんおいしいコーヒーを飲もうと思ったら何を一番に気にしますか?
抽出が一番!
と考えられがちなコーヒーですがそんなことはなくて、なによりも大切なのはコーヒー豆の品質です。見聞きしたことある方もいると思いますが、質の良いものはスペシャルティコーヒーなんて呼ばれたりします。もちろん抽出も大切ですが、むずかしくはありません。これについては長くなるので別記事で解説します。
お米の場合で考えてもらえれば分かりやすいと思うんですが、そりゃもちろん炊き方は大事だけど素材であるお米自体の良し悪しのほうがはるかに重要ですよね。
コーヒーもそうです。そしてそれはホットもアイスも同じこと。
それなのになぜアイスコーヒーが苦手な方が多いかというと『苦い・味がない・香りがない・雑味を感じる』ような良くないコーヒー豆が『アイス用』として販売・提供されることが多いからというのがその理由です。なんで?ってなると思うんですが(実際僕もそうなった。)なぜか昔からそうだったようで詳しい理由は分かりません。
ちなみに僕が以前勤めていた堀口珈琲の堀口マスターは
「たぶん自分が日本で初めて高品質なコーヒー豆だけでアイスコーヒーを提供したんだけど
あそこのコーヒー屋は何考えてるんだ?ってめちゃくちゃ言われたよ!」
なんてことを笑いながら良く話していました。
美味しい物を提供するために良い素材を使う。こんな当たり前のことをやって色々言われるなんてすごい話です。
アイスコーヒーは苦いだけで味や香りがしない、というのも冷やして飲んだせいではなく元々の素材であるコーヒー豆の品質が原因です。確かに冷たいものは味や香りを感じにくくはなりますが、良いコーヒー豆であればアイスにしても十分に美味しも香りも感じられます。
雑味についても同じく品質の問題で、良いものであればまず感じることはありません。
苦みが強すぎるのは焙煎の問題
ホットコーヒーでもよくありますが、特にアイスコーヒーってキツイ苦みを感じることってありますよね。あれは焙煎が極端に深くて、言ってしまえば焦げているから感じる苦みです。せっかく質の良い素材(スペシャルティコーヒー)でも焙煎で台無しになっていては美味しいわけがありません。
良いコーヒー豆で入れたアイスコーヒーは美味しい
たまに開催しているMuiのコーヒーセミナーは10種類も飲み比べのできるお得感満載な内容なんですが、一番驚かれるのがアイスコーヒーかもしれません。定番商品で一年通して人気上位の『エチオピア イルガチェフェ ウォテステーション・ナチュラル』という長い名前のコーヒーの深煎りをアイスコーヒーにするとまるでジュース!
「言われなきゃコーヒーって分からないかも。」
と言われることも。
ほんとにそんな感じで、一般的なアイスコーヒーとかけ離れたイメージにとにかく驚かれます。そしてもちろん素晴らしくおいしい。アイスコーヒーの概念が変わります。
アイスに向いているコーヒー豆
もちろんどんなものでもアイスコーヒーには出来るし、最終的には好みの問題ではありますが
個人的には深煎りのコーヒー豆を使うのがおすすめです。
僕がその方が美味しく感じるからというのが一番の理由ですが、それなりの根拠もあります。舌は構造上、冷たいと味を感じにくくなります。そのため濃い味の深煎りを使った方が味をしっかりと感じられ、冷えると出やすい濁り感も目立たなくなります。
また、コーヒーは冷えると酸味を感じやすくなるため酸味の穏やかな深煎りを使うほうが味のバランスが取れる、というのが主な理由です。
とは言え結局は好みの問題で、深煎りじゃないコーヒーをアイスにしてもご自分が美味しいと感じればそれが正解!です。
美味しいアイスコーヒーの淹れ方
さぁ、いよいよペーパードリップでの淹れ方の解説です。(ネルドリップでも同じ。)
小むずかしいことは必要なく下の表にある3つの数字を守るだけ。粉の量と抽出量(出来上がりの量)はもちろんですが、タイマーで時間を計りましょう。これだけで抽出は上手くいきます。あとは出来上がった濃いコーヒーを氷を入れたグラスに注げば完成です。
粉の量 | 抽出量 | 抽出時間(分) | |
1杯分 | 20g | 90cc | 2:30~3:00 |
2杯分 | 30g | 180cc | 3:30~4:00 |
3杯分 | 40g | 270cc | 4:00~4:30 |
抽出で大切なのはお湯を少しずつ細切れに注ぐこと。そうするとしっかりと浸透圧が働いて成分がきっちり抽出されます。お湯を注ぎ方よりも一度に注ぐお湯の量を気にしましょう。時間を守って淹れようすると必然的に少しずつ少しずつ注ぐしかないので自然と適切な淹れ方が身につくと思います。今までのセミナーでの経験上3回もやれば皆さん大体感覚がつかめているようです。
もっと詳しく解説することも出来ますが長くなるし結果が変わるわけでもないのでこのくらいにしておきます。
サードウェーブと呼ばれるコーヒーショップを中心に水出しが流行っていますが断然ドリップがおすすめです。理由は単純。やっぱりお湯で淹れた方が味も香りもしっかり抽出出来て美味しいからです。
アイスコーヒーは劣化が遅い
淹れた後のコーヒーは保温しておくとすぐに劣化してしまいます。大きなサーバーに入って保温されたいるコーヒーを飲んで
酸っぱ!
という経験ありませんか?温度が高いと劣化がどんどん進み、あの酸っぱいコーヒーになってしまいます。そう、皆さん苦手なあの酸味は劣化によるものだったんですね。ちなみにコーヒーに元々ある酸味は果物に感じるのと同じものなので、果物が好きな方なら美味しく感じられると思います。
ちょっと話がそれてしまいましたが、そんなわけでホットコーヒーを長時間保温しておいて美味しく飲むというのは残念ながら出来ません。でもアイスコーヒーは温度が低いので非常に劣化が遅い。そのため朝たくさん作っておいて冷蔵庫で保温しておけばいつでも美味しいアイスコーヒーが楽しめます。水筒に入れて仕事に持って行くのも良いですね。
いつまで美味しく飲めますか?と聞かれた半日くらいは大丈夫、と答えていますが最終的には飲む方が自分が美味しいと感じるのなら1日でも2日でもいいと思います。あんまり日が経ちすぎる傷んでしまっておなかを壊す心配もあるのでおすすめしません。さすがに飲み切るのに3日も4日もかかるってことも無いとは思いますが。
同じ要領でカフェオレも
アイスコーヒーと同じ要領で美味しいカフェオレも簡単に作れます。やはりおすすめは深煎り。上の表の通りに淹れたら後は温めた牛乳と混ぜ合わせるだけ。コーヒーと牛乳の割合は自由ですが1:1を基準に調整してみてください。僕はコーヒー90ccに対して牛乳120ccくらいが好みです。
アイスカフェオレを作るときは抽出したコーヒーを氷を入れたグラスに注がずコーヒーの入った容器を氷水にあててしっかり冷ましてから牛乳と合わせると美味しくできますよ。ホットコーヒーを淹れる時もそうですが、目盛り付きのガラスのサーバーがあると便利です。
季節を通じて色々な作り手のコーヒーをご紹介していますがアイスコーヒーやカフェオレを楽しみたい時はまず深煎りのコーヒー豆でお試しください。良いコーヒー豆で作るとアイスコーヒーでも味や香りが全然ちがって美味しいですよ!