Mui初入荷のイエメン。これは一度体験していただきたい!
なんでこれまで扱わなかったかというと、理由は単純。
良いものが無いから。
可もなく不可もなく、じゃないんです。
不可な要素があり過ぎるコーヒーしかない!
そんな状況です。
そもそもイエメンのコーヒーはなぜ品質に難有りなものばかりなんでしょう?いくつか理由がありますが大きな要因として挙げられるのは2つ。
1.農家がドライチェリー(収穫して乾燥したコーヒーの実)を家に保管し、必要に応じて販売し現金収入を得るのが一般的。そのため新豆(ニュークロップ)という概念は一般的でなかった。
2.未完熟な実の混入が多い。
まず1について。コーヒーは米と同じで新しい方が状態は良いです。他の産地を見ると新豆しか取引されません。何年も経ったものをオールドビーンズ(クロップ)などと言って良いと意見もまれにありますが、劣化しかしません。個性も失われます。
そしてやっかいなのが2。コーヒーの木はさくらんぼのような実が生りますが、その中にコーヒー豆(種)が2粒入っています。質を考えれば完熟したものを収穫することが必須です。
コーヒー豆を取り出した果肉や果皮はたい肥にしたり、イエメンではギシル、他の国ではカスカラティーと言われますがお茶の用に飲んだりします。イエメンの農家にとってギシルの収入は重要なんですが、良いギシルを作るには青い実を摘むことが大事だそうで…。なので完熟した実を摘むのを拒みがち。青い実を摘めば良いギシルが高値で売れるしコーヒー豆も売れるしで農家にとっては良いわけです。完熟なんて摘んでたら収入が減ってしまうじゃないか!と。
そんな状況を一変させたのがイエメンで2016に設立されたキマコーヒー。ひとことで言うと当たり前のことを当たり前にやり切っている会社です。(これがコーヒー業界では本当にむずかしい…。)
まずひとつめ。イエメンの7カ所に選別・乾燥場を有する拠点を所有。農家から直接チェリーを買い付けているため、生産年度とトレサビリティ双方が明確。
ふたつめは熟度管理の徹底。未完熟や過熟なチェリーの混ざっている場合は買い付け段階で取り除いてから受け入れ。熟度管理の指導も兼ね、除去は農家自身で行ってもらっている。完熟チェリーのみを買い取る代わりに、価格は高値を提示しています。特に品質が優れている生豆が高値で売れた、という場合には追加プレミアムも支払っています。
さらにコーヒー豆の遺伝子検査もした結果、2020年8月イエメニアというあたらしい品種を発見!ティピカ系、ブルボン系いずれにも属さず、イエメン国内で独自に発展を遂げた品種でイエメニアと名づけられました。
そして今回入荷したのはガルビ村で栽培されたイエメニア品種のロットです。もちろんキマコーヒーが手がけたもの。もうね、飲んだ瞬間感動しました。同時に困惑(?)も。これまでMuiが扱ったどのコーヒーとも似ていない、なんと表現したらいいのか悩んでしまうような個性があるんです。フルーティとも言えるし、スパイシー。ワインや蒸留酒のような感覚もありローズヒップにも似ているような。
一般的なイエメンにあるネガティブさはゼロ。価格は高いですがそれでも飲む価値は十二分にあります。コーヒーの歴史上はじめて登場した欠点無しのイエメン。必飲です。
余談ですが「モカ」という言葉の定義、ご存知ですか?
銘柄のように扱われていますが「イエメンとエチオピアのコーヒー」という定義なんです。その昔、イエメンのモカと言う港町からこの2つの国のコーヒーが輸出されていたのがその由来。つまり全く意味無し!な定義です。
ただ、そのモカ港での扱いが悪く、生豆が発酵してしまってぬか漬けのような香りがするもんで、それが「モカフレーバー」なんて言われるようになったとも。イエメンのモカマタリはかなり有名ですが、すさまじいほどの欠点豆の混入率!欠点豆を取りのぞいたら半分以上は捨てることになります。しかも取りのぞいたところで美味しくない。それどころか体調が悪くなってしまうのでぼくは飲めません…。