「卸先めぐり」の2軒目、『bistro-confl.(ビストロ・コンフル)』の店主倉田さんインタビューの後編です!
時代の最前線、華やかでかつ混沌とした現場を20代前半で切り盛りした青年は、何を思ってここまで走り抜けてきたのでしょうか。
目次
“流行りもの”には、今に繋がるヒントが
4年ほどグローバルダイニングで働いて後、“前職場よりも、もう少し大人が通うような雰囲気”だという銀座のカリフォルニア料理店に転職。
2000年前後に流行っていた“カリフォルニアキュイジーヌ”という、様々な国の料理を掛け合わせて作るスタイルの店で、例えばわさびやコチュジャンといった調味料をマグロのレアなステーキに合わせたり。空間デザイナーを入れて内装を作り込む“ファインダイニング”の流行もあり、その流れを汲んだいわゆる“流行り”の店だったそうです。
フランスやイタリア修行経験があるグランシェフが経営しているお店や、実際にフランスでの修行経験もなく、
「自分のルーツはかなりカジュアルで、邪道なスタート。正統派イタリアン・フレンチなどのきちんとしたルートを踏んでいないので、僕らは“雑草みたいなやつら”と呼ばれるんですけど。」
と振り返りながら、サービスマンとしては早い段階で経験や知見も広がってラッキーだったと語る倉田さん。六本木や麻布などのめったに経験出来ないような環境で鍛えられたことは、なにより楽しかったそう。ここで出会った料理人と後にタッグを組んで起業するのですが、1年ほどで退職し、麻布十番のお店に移ります。
会社からの独立、confl.が出来るまで
元々地下がクラブで、1階がカフェという業態だった店なのですが、地下を会員制のダーツバー、1階をイタリアンレストランに改装する際に合流し、レストランの店長として半年ほど勤務しました。
その後、代官山の高級イタリアンを経て、銀座の『ル・カフェ・ブルー』というカジュアルなフレンチカフェで1年勤務し、28歳で独立。マネジメントをしたり、大きな会社で立ち回るのも好きではありつつも、会社に左右されて自分のやりたいことの本質が見えなくなってしまうのは良くないと思った出来事があり、勢いでの独立でした。
そしてグローバルダイニングを出てから勤めた銀座カリフォルニア料理店で一緒に働いていたフレンチの料理人と共同経営で『ル・ソルシエ』を開業します。
場所は駒沢の住宅街にあり、元居酒屋だったという築50年以上の居抜きの物件。“魔法使い”という意味の店名で、メニューはおまかせの5000円のコース料理のみという尖った業態だったためか、なかなかお客さんが来なかったそう。1年ほど赤字が続き、料理人とも考え方がなかなか合わず、1人でまた1から開業をするために閉店を決断します。
そして場所は同じままにリニューアルして2008年に開店したのが、『bostro-confl.』なのです。
自分の未来は、一緒に働く人次第
30歳になる年に、近所の人も気軽に店に立ち寄れるようなカジュアルなフレンチビストロにしたいという思いから始めてから、今年10周年となる『bistro-confl,』。倉田さんはオーナー兼サービスマンとして店に立ち、シェフを招いて柔軟にチームを作ってきました。
何回かシェフが入れ替わり、現在は3人の女性料理人とお店を回しています。(2018年12月時点)
今後の展開を聞くと、最終的にこんな店を作りたい!という大きな野望があるというわけではなく、「働いてくれる人に、うちの会社にいて楽しくわくわくするような状態を作っていたい。ルーティンになってくると飽きてきちゃうし、人が健やかに成長するために他にもお店が必要だと思ったら展開する。」とのこと。お客さんのことだけでなく、スタッフの健やかさについても語る倉田さんは、人とのコミュニケーションを心の底から楽しみ、愛しているのだろうと感じ取れます。
ちなみに大沢さんとの出会いは、以前に働いていた男性シェフと、Muiのお菓子担当山下さんが料理学校の同期だったことがきっかけでお店に来てくれたというのが最初の出会いだそう。
憧れが憧れを生む。文化の継承
大学1年で退学を決めるほど「お店」という空間に惹きつけられ、今まで走り続けてきた倉田さん。とりわけ、「夜のレストラン」の華やかさとかっこよさへの憧れがエネルギーでした。(マフィア映画に観た「俺の経営してるレストラン行こうぜ」と言い、店に向かうシーンがきっかけだそう。中高時代の価値観が生きてる!笑)
美味しいご飯ももちろん好きでワインも好きだけど、やはりそれを含めた空間が好きで、そこで過ごす2〜3時間ほどの時間をいかに創っていくかということを日々考えて動き続けています。
大前提として、美味しいご飯やワインがリーズナブルであること。その次に、店で働く人がお客さんにとって魅力的であること。自分がかつて抱いた憧れを、今度は自分が創り出し、次の時代にバトンタッチしてこうとする姿にも見えます。
文化への敬意は、時代を問わない“人への敬意”
フレンチというジャンルを選んだ理由は、独立した時に一緒だった料理人がフレンチだったのでその流れで‥ということですが、そこにはジャンル・文化に対しての敬意がありました。
フランス料理は、本来パスタやリゾットは出てこない。日本人は器用なので、色々なスタイルを取り入れがちですが、そうではなく本場のスタイルそのままに提供する。ジャンルが交差するレストランでの経験が長かったからこそ、長く伝わる本物の食文化を伝えられる店にしたいという反動があったといいます。
店内には、本や額縁が多く並んでいますが、額縁に入っているポスターは、1890年代に使用されていた印刷見本。実際に使用されていたプロダクトデザインやグラフィックデザインが大好きで、おまけにフォントマニアだという倉田さん。お気に入りの古書店で見つけて集めたものを飾っていると聞き、遠い日の“酒ぶた集めに熱中する小学男子”の情景が浮かびました。
インタビュー中にも、「貯金するのなんかより、街に繰り出しておいしいワインを飲んだりして経験値や人との繋がりをストックした方がいいよ。」とアドバイスをくれた倉田さん。自分が生きるその時代と、過去に人々が繰り広げていた文化をこよなく愛する姿を見ていると、悩んだ時に会いに来たくなってしまうような気がします。
『bistro-confl.』倉田さん×Muiのコーヒー
1. Muiのコーヒー豆との出会い
大沢さんがお店に来てくれた時に、「ワインだったら国の名前だけじゃなくて作り手まで語られるのに、コーヒーだけ国の名前ですまされる。扱いがぞんざいなんですよね。」という話しが印象的で、今度は自分がお店に。
それまではコーヒーにそこまで興味がなかったのですが、Muiのコーヒーを飲んでみてすぐ、お店で提供したいと即決しました。
2. コーヒーに合わせたい、お気に入りのメニュー
いつも5〜6種類くらい用意しているデザートですが、特にチョコレートものがおすすめです。
ランチも、最後のコーヒーまで美味しいと評判。夜は2種類のハンドドリップで出しています。
3. Mui大沢から一言
料理とワインが美味しいのはもちろん、とにかく居心地の良いコンフル。
倉田さんが作り上げたこの空間が大好きです。
初めての方でもカウンター席がおすすめですよ。
『bistro-confl.(ビストロ コンフル)』
住所:東京都世田谷区上馬4-3-15
03-3419-7233
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